バークリーコンサルティング | Future on your side.

DXとは?ーDXの定義_2

DXとは?ーDXの定義_2

2022/08/18

はじめに

前回、DXという概念の登場背景や経緯、また現在の日本における定義と実情について整理してみました。今回は日本と欧米とでの比較から考察を続けてみたいと思います。

 

DX、 日本と欧米とでのとらえ方

早速ですけど、クイズです。

あなたは経理部門の担当者です。日々経費精算で上がってくる紙の伝票と領収書との突合、そしてシステムへの登録作業を行っています。記載ミスがある場合は起票者へメール。遅い場合は電話で督促します。毎日毎日遅くまで残業をして、ようやくなんとか回している状況です。ある日、この“作業”がデジタル化し、あなたは日々の残業から解放され、財務分析の“業務”にシフトすることができました。

さて、このデジタル化はDXといえるでしょうか?

 

日本では○(少なくとも〇に近い△)。欧米ではどちらかというと✕に近い△です。

 

単純に“作業”をデジタル化し効率化するだけでは日本でもさすがにDXとは呼びません。ただ、その恩恵で別の新しい生産的な“業務”に時間を使えることになったという文脈をもってDXと呼ぶことはよくあります。ただ、欧米では、まったくDXと認めないわけではありませんが、この場合いわゆる「X」の部分がなく、経営戦略、変革機会に紐づいていないことが評価されないのです。

 

経産省のDX推進ガイドラインによるDXの定義は以下のとおりです。

「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」

 

一方で、世界有数のIT分野を中心としたリサーチ・アドバイザリを行うガートナー社では「デジタル・ビジネス」という表現を用いて企業内のIT利用を三段階に分けています。(※1)

  1. 業務プロセスの変革
  2. ビジネスと企業、人を結び付けて統合する
  3. 仮想と物理の世界を融合して人/モノ/ビジネスが直接つながり、顧客との関係が瞬時に変化していく状態が当たり前となる

 

また、世界最大規模の戦略コンサルティングファームであるマッキンゼー・アンド・カンパニー社のDXの定義は以下です。(※2)

  1. 包括的なデジタル変革: 組織の構造変革におけるデジタル活用、デジタルを軸にした戦略と抜本的な組織変革の推進
  2. 顧客体験のデジタル化: デジタル活用による顧客ジャーニーの再構築、デジタルマーケティングやパーソナライゼーションを通じて顧客の囲い込み、啓蒙
  3. オペレーションの弾力性: オペレーションでのアナリティクス活用 (例:予防保全、生産性改善)による弾力性の強化やバックオフィスのプロセスの最適化・自動化
  4. 新規ビジネス構築: デジタル技術を活用した新規ビジネスの立上げや新規顧客セグメントの開拓
  5. スキル再教育と組織能力構築: デジタルに必要な組織能力構築、またそのための社内人材のスキル再教育、デジタル人材が活躍できる制度や仕組みの構築
  6. 組織全体の敏捷性: アジャイルオペレーティングモデルの導入、必要な仕組みの構築
  7. コアテクノロジーの近代化: クラウド・API 技術の活用、ITコストの最適化、データアーキテクチャーやデータ変革の実行

 

つまり、日本でのDXは変革というキーワードはあるものの「業務面の効率化」や「システム導入」などオペレーション改善の要素が強い(というか、それで十分な成果と認識される)のに対し、欧米においてそれは単なる一要素、DXの初歩的な段階に過ぎないのです。欧米ではあくまで経営戦略にもとづく変革機会(とくに対顧客に対しての変革)としてではないと評価されない傾向があります。

 

DXの進め方

 とある大手企業のDX推進室の室長さんと話をした際、こんなことをおっしゃっていました。

 「DX推進室という組織をつくったが、やっているのはRPAなど使った業務改善ばかり。DXの本丸は「X」の部分と理解しているが、そもそも一部署だけでできるわけがない。トップが自らぐいぐい進めないと、しょせん現場が発想するからどうしても足元の改善にとどまってしまう。でも、いまはそれでもよいと思っている。そういう小さな改善を積み上げていくうちにDX人材の育成や啓蒙もできるはずで、そのうち必ずブレイクスルーがやってくるはずだから」

 最終的なゴールが「X」であることを認識されているので、この方かなりいけているほうだと思います。ただ、上記の進め方では、残念ながら、明らかにスピード感が足りません。

 

 では、どうすればよいのでしょうか?については、いずれまた。

 

おわりに

今回は日本と欧米でのDXのとらえ方の違いと、進め方のごくごく一部について考察しました。今後、進め方や検討ステップについてはもう少し深堀していきたいと思います。

 

<参考>

(※1)ビジネス+IT「ガートナーが提言するデジタル・ビジネスとは?」

(※2)マッキンゼー・アンド・カンパニー「デジタル革命の本質」

ページ上部へ戻る